木に学べ~法隆寺・薬師寺の美

今日のおすすめは、西岡常一著『木に学べ~法隆寺・薬師寺の美』(小学館文庫)です。
著者は法隆寺宮大工棟梁として昭和の大修理を手がけ、後に薬師寺の棟梁を務めた人です。
この本には、法隆寺と薬師寺がどのようにつくられたか、
宮大工だからこそわかる貴重な話が書かれています。

法隆寺の五重塔は建てられてから1300年以上経っていますが、
使われているのは1000年以上の樹齢のヒノキだそうです。
1000年の間風雪に耐えて生き延びた木が塔になり、
さらに1300年もの間建ち続けている。
ヒノキ以外にそれだけの耐用年数のある木はないことを
そのころの人が知っていたことがすごいと著者は言います。

法隆寺棟梁の口伝に「堂塔の木組みは寸法で組まずに木のクセで組め」とある。
それぞれの木が生き延びるためにできるクセを生かして
組み合わせて初めて長生きをするということなのだそうです。

それを証明するように、
昭和の大修理で解体した五重塔の四隅の木は、
下から一直線にスッとたち、1300年前に作ったままだったとあります。

自然と調和し、木を生かした見事な建造物であることが
よくわかります。

飛鳥の大工の残した「機能美」のことを
「それぞれの部材が十分役目を果たして、余分というもんがないというのは美しいもんです」
と著者は言います。

後の時代のように装飾的になるのではなく、
必要なことを必要なだけしたために、
これだけ長く美しい姿をとどめていることを知りました。

ちょうど今「鬼に訊け 西岡常一の遺言」という映画も上映されていて、
薬師寺の棟梁として命の限りを尽くした西岡氏の肉声を聞くことができます。
ひと言ひと言が重く、こちらもおすすめです。

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