New! はたらく土の虫

土の上で忙しそうに動き回る虫はいったいなにをしているのか。

はたらく土の虫

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特徴と内容

土の中にいるたくさんの虫は、動きにくい環境の中で何を食べ、どうやって生きているのか。気鋭の研究者が解説。

書籍名 はたらく土の虫
著者名 藤井佐織
出版年 2023年
定価 本体2400円+税
判型 B6判上製・4色刷
ISBN ISBN978-4-902381-46-7 C0045
「昆蟲(ニューシリーズ)」(日本昆虫学会)に書評が掲載されました。
とてもわかりやすく、本書の理解がさらに進みます。
ぜひご一読ください。
日本昆虫学会 書評(PDF)

本の中身

目次

まえがき

第1章 生態系のはなし
1生態系の中の物質の流れ
虫たちのいる生態系
窒素やリンは土と植物の間で循環する
炭素は生物の呼吸によっていったん大気に還っていく
生物のはたらき
2植物と動物のはたらき
植物のはたらき
植物がもつ、虫たちが食べにくい硬さや渋み
動物のはたらき
食物連鎖に流れるエネルギーの量
死んだ餌から始まる腐食連鎖
3分解者が住む土の中の世界
虫たちは薄く、狭いところに集中して住んでいる
住みかの環境は細かく分かれる
強力な分解者、微生物も住んでいる
土壌動物の種類と数
4「分解」における虫たちのはたらき
体のサイズによるグループ分け
腐食連鎖を通して有機物を分解し、土をつくる
落ち葉を直接食べる大きな虫は強力な分解者
住み場所を改変する生態系エンジニア
微生物食者は微生物のはたらきに影響する

第2章 土に暮らす虫たちの紹介
1ミクロファウナ―体の幅が〇・一ミリメートル以下の極小の虫
①原生生物――植物でも動物でもない単細胞の生き物
②クマムシ――想像を超えた環境で生きられるすごい生き物
③センチュウ――多様な戦略であらゆる場所に生息する
2メソファウナ―体の幅が二ミリメートル以下の虫
①ヒメミミズ――体の節が分かれて増殖することも
②トビムシ――お尻にあるバネで飛び跳ねて逃げる
③ダニ――土壌中で最も優占する節足動物
④カニムシ――ハサミを駆使する強力なハンター
⑤カマアシムシ――眼も触角もない、鎌状の脚をもつ虫
⑥コムシ――数珠のような長い触角をもつ
⑦コムカデ、エダヒゲムシ――白く透き通った、足の少ない多足類
3マクロファウナ―体の幅が二ミリメートル以上の虫
①クモ――土の中のトッププレデター
②ムカデ――待ち伏せと毒で獲物を捕らえる
③ヤスデ――大量の落ち葉を食べて自分の糞も食べる
④ワラジムシ ――水界と陸域の中間的性質をもつ土壌で繁栄
⑤ミミズ ――土壌を耕しながら大量に食べる「大地の腸」
⑥シロアリ ――土壌動物随一の分解能力をもつ
⑦アリ ――多くが肉食、土の中では狂暴な生き物
⑧さまざまな昆虫の幼虫――一生ののうちの一時期だけ土で過ごし、物質を循環させる
⑨地表性甲虫――土に似た地味な色のものがほとんど
⑩ナメクジ、カタツムリ ――食べるものは時と場合によって変わる

第3章「分解」だけではない土壌動物のはたらき
1根に依存する土壌動物のはたらき
根からにじみ出る粘液や根と共生する菌を食べる虫
根から出る液を引き金に根の周りで分解が進む
根の周りで微生物を食べる虫が植物の成長を助ける
菌根菌と植物の共生関係
菌根菌を食べる虫も植物の成長に影響を及ぼす
2捕食というはたらき
捕食者が餌生物同士の関係性を変える
トビムシが菌根菌・腐生菌・病原菌の競争に影響する
原生生物やセンチュウも根の周りの細菌の種構成を変える
3運搬によるはたらき
運んだり運ばれたり
菌は胞子をつくって増える
多くの虫が胞子の散布に関わる
いろいろな運搬と便乗
偶然が重なって結果を導く

第4章 土壌動物の生きざま
1土壌ならではの制約
動きにくく真っ暗な土の中で生きる
匂いを利用する虫
土の中は移動しにくい
土の虫の食べ物の好き嫌い
好みはあっても土の中で選んでいる余裕はない?
土壌動物は雑食者がほとんど
2多くの種が共存できる不思議
ある空間である種が独り勝ちしないのはなぜか
餌が異なれば共存できる
ミクロスケールでの住み分けが餌の違いにつながる
トビムシとササラダニがもつ異なる生存戦略
攪乱や捕食が多様性を生み出す
3さまざまな土壌動物の集まり
場所ごとに異なる群集が形成される
地上の植物と作用し合う地下の虫
地上と地下の群集の入れ替わりは連動する
地形がさまざまな群集をつくり出す
土の虫の移動スケールに謎が残る

第5章 生態系の調和
1多様性の意義
多様な虫がいることに意義はあるのか
多様であればはたらきが大きいわけではない
少しずつ異なる性質が生態系を持続させる
2バランスが壊れてしまうその前に
土の群集の絶妙なバランス
最後に
あとがき
索引

自然科学